カナダ出身のテクニカルデスメタルバンドのGorgutsは、これまで6枚のオリジナルアルバムをリリースしてきました。(厳密には『Pleiades’ Dust』はEPですがアルバムとしてカウントされている場合が多いので本ブログでも同様の扱いとします)
1stは純粋なデスメタルアルバムでしたが2ndではテクニカルなプレイが増え、3rdで完全にアヴァンギャルドに振り切ったことでデスメタル界にその名を轟かせました。
2016年以降は目立った活動をしていないようですがその人気と影響力は今でも根強く、特にテクニカル / アヴァンギャルドメタルの基礎を築いたといっても過言ではありません。
そんなGorgutsのアルバムをランキング形式で紹介します!
第6位 From Wisdom to Hate (2001)
前作から3年後にリリースされた4thアルバム。
前作『Obscura』の流れを汲んだアルバムですが、あの良い意味でトンチンカンなアルバムからは少し落ち着きいてスローパートをじっくり聴かせる場面が増えました。ディソナントデスメタルの片鱗が今作からより顕著になり、前作とはまた異なる雰囲気を醸し出しています。
前作の張り詰めた緊張感からは少し脱力した感じがしますが、これが意図したものなのか、表現したいものを全て出し切ってしまったのかは定かではありません。
ただ本作リリース後に12年のブランクが空いてしまったということは、燃え尽きてしまった部分があったのかもしれないですね。
第5位 Considered Dead (1991)
純粋なオールドスクールデスメタルをプレイしていた最初期の1stアルバム。
この手のアルバムとしては珍しくアコースティックギターのアルペジオで幕を開け、その後は比較的基本に忠実なOSDMを聴かせてくれます。
プログレッシブな展開は多くないもののキャッチーさとリズム隊のベタベタした音色が耳に残るため、単調さや飽食感を感じることなく作品を聴くことができます。
ラストの『Inoculated Life』ではTestamentやObituaryでプレイした渡り鳥のJames Murphyがギターを弾いています。
OSDMのアルバムとして個人的にお気に入りのアルバムで、ヘビーさを維持しながら聴きやすさを兼ね備えている素晴らしい作品だと感じています。
本バンドの魅力・差別化ポイントはアヴァンギャルドな部分にあると思うのでこの順位にしましたが、良盤以上なのは間違いないと思います!
第4位 The Erosion of Sanity (1993)
比較的シンプルな前作と比べテクニカルなプレイングが増えた2ndアルバム。
音数が明らかに増えた一方でキャッチーさは減退。Deathの『Human』にインスパイアされたのか、スロー・複雑・不気味の三拍子が揃ったフレーズが見られるようになりました。そういったフレーズとスラッシュビートやブラストビートをうまく使い分けることで、聴き手を飽きさせない作品に仕上がっています。
2曲目『Condemned to Obscurity』ではピアノを使ったアレンジが施されるなど、このバンドならではのセンスが2作目にして感じられますね。
テクニカルなプレイに聴きどころが詰まった初期テクデスの名盤。
第3位 Pleiades’ Dust (2016)
33分弱の1曲構成でリリースされた7thアルバム。(厳密にはEPですがアルバム扱いとします)
創造と破壊を繰り返してきた人類の歴史を表現するため、ヨーロッパ史を中心に歌詞にしたコンセプチュアルな作品。
音楽性として前作『Colored Sands』を継承しており、パワーコードでガンガン攻めるようなフレーズは最小限で、不協和音とアルペジオ交じりの繊細なギターワークでゆっくりと進行していきます。アルバム後半で5分ほど小休止のようなものを挟みますが、破壊の後の静けさや虚しさを表現しているのでしょうか。
1曲のみの大作で起伏に富んでいるわけでもないので、歌詞の意味がある程度わからないと冗長に感じてしまうかもしれません。
ただその意味を理解することで、しみじみと聴き入ってしまうようなアルバムに変わってくれると思います。
第2位 Colored Sands (2013)
前作から12年の時を経てリリースされた5thアルバム。
前作まではアヴァンギャルドな作風でしたが今作からは少し趣向を変えて、アルペジオを多用したディソナントデスメタルに仕上がっています。
サウンドプロダクションもこれまで以上に空間を意識したものとなり、乾いていてサラッとした音になっているため奥行きの広さを感じられるようになっています。
これまでのデスメタル然としたヘビーさは控えめかもしれませんが、攻撃性がスポイルされたわけではありません。むしろこけおどし的なものを排除し、純粋な怒りや痛みをヒシヒシと感じられるような作品になっていると思います。
Gorgutsといえばアヴァンギャルドなイメージですが、大人になった彼らのサウンドも非常に聴きごたえがあります。ただボーカルに関しては今作が最もデスボイス然としている気がします。
この霞んだサウンドプロダクションも個人的には好みです。
第1位 Obscura (1998)
完全にタガが外れてしまった歴史的名盤の3rd。
テクニカルな方向に寄ったもののまだ整合性の取れたプレイングに徹していた前作から5年後、何があったのか実験音楽の雰囲気すら漂う作品を世に放ったGorguts。
ワウを多用したギターの変態的なプレイももちろんですが、比較的カッチリしていたドラミングもかなりラフなプレイングになったことで、前作までにあった密度の高さから空間を広さを感じさせる音像へ変化しました。
メタルというフォーマットで感情の赴くままに実験し、それをセンスの良さで音楽としてまとめ上げたような非常に挑戦的な作品となっています。
アヴァンギャルドメタルの礎となった作品で、多くの人がこれを一位とするのではないでしょうか。
トータル1時間ほどになるので聴く通すには体力が必要ですが、時代を変えた名盤と言っても過言ではないでしょう。
いかがでしたでしょうか?
Gorgutsにハズレのアルバムはないと思うので、ぜひすべての作品を聴いてみてほしいと思います。
OSDM → テクデス → アヴァンギャルド → ディソナント と時期によって音楽性が異なるので、そういった変化を感じながら聴くのもありかもしれませんね。