ブラジル出身のスラッシュメタルバンドのSepulturaは、これまで16枚のオリジナルアルバムをリリースしてきました。
メタルというジャンルのイメージのない国からの刺客として人気を博し、4thまでは真っ当なスラッシュメタルを展開していました。しかし5th以降はグルーブメタルの影響を受けながらトライバル色の強い作風のアルバムがメインとなり、内輪揉めによりギター兼ボーカルのフロントマンMax Cavaleraが脱退して以降は全く他のバンドとなってしまったといっても過言ではないと思います。
残念なことに2025年限りでの解散が決定した一方で、絶縁状態にあった兄Maxと弟Igor CavaleraがCavalera名義で1stと2ndのリレコーディングを行うなど嬉しいニュースも舞い込んできました。
そんなSepulturaのアルバムの中でも、Max所属時のものをランキング形式で紹介します!
第6位 Morbid Visions (1986)
ブラックメタルやウォーメタルにも影響を与えたと言われる1stアルバム。
メンバーはまだ高校生くらいの年齢なので演奏技術が追いついていませんが、青臭い初期衝動が癖になる作品です。サウンドプロダクションはよろしくなく迫力不足な感は否めませんが、トレモロピッキングと吐き捨て系のボーカルが印象的で意外と聴きどころは多いように思います。
名曲『Troops of Doom』の音スカスカバージョンが聴けます。
若さゆえの勢いがあるのは面白いですが、チューニングもままならないほどには粗削りなので、やはり次作以降の作品に軍配が上がるかな、というのが率直な感想です。
2023年のリレコーディングバージョンは、その勢いは殺さずに現代のサウンドプロダクションでパワーアップすることに成功した素晴らしいアルバムなので、そちらから聴くのもありかもしれません。
第5位 Roots (1996)
前作から見せていたスラッシュメタル以外の要素に全振りした6thアルバム。
これまでのスラッシュメタル要素はほぼ消え失せ、完全にトライバルな方面に舵を切りました。ここまでくるともう別バンドです。1曲目の『Roots Bloody Roots』はまだ聴きやすい方で、これ以降の曲は民族楽器なんか使っちゃってより先鋭的な方向に進んじゃってます。
スラッシュメタルが衰退する中で、Kornを筆頭とするニューメタルと民族音楽を上手く組み合わせるという難題にチャレンジし、高い次元でこなしてしまうこのバンドの地力には感嘆するばかりです。
1曲目は大好きな曲ですが、アルバムを通しで聴くとなると少し辛くなってくるのが正直なところ。
それでも高クオリティなのは間違いありません!ベースが前面に出た生々しいサウンドプロダクションも個人的には◎
第4位 Schizophrenia (1987)
サウンドプロダクションがいくらか改善した2ndアルバム。
前作から1年しか経っていませんが、スラッシュメタル然とした貫禄が出てきた本作。
BIG4をはじめとするアメリカのバンドの明るさとも、ヨーロッパらしい湿り気のあるドイツのバンドとも異なる、粗暴でありつつスリリングさを保ったプレイングをするのが彼らの特徴であり魅力だと思います。
BPMほぼ全曲同じじゃん、なんていう野暮なツッコミはさておき、1曲ごとのキャラクターが前作よりもハッキリしだしたと思います。
この時代特有のスネア?のポカポカ音、なんか癖になります。
第3位 Chaos A.D. (1993)
前作でスラッシュメタルを極めてしまったバンドが新機軸を求めた5thアルバム。
スラッシュメタルが時代遅れのものと認識され始め、多くのバンドがグルーブメタルに片足を突っ込んでいきました。彼らもその流れに乗ったのは間違いありませんが、PanteraやMachine Headのチャラさのあるグルーブとはまた違う独自のスタイルを確立しました。
1曲目からこれまでと比べたらスピードを大幅に落としたものになっており、リアタイで聴いた人たちはさぞかし驚いたことでしょう。そんな中でもエッセンス的にスラッシュメタル要素を取り入れたり、『Biotech Is Godzilla』などスラッシュ全開の曲が収録されているので、メリハリのついたアルバムとなっています。
PVからもわかるように、これまで以上に政治色を前面に出した歌詞も目立ちます。
多くのバンドが時代の流れへの適応を求められて苦しむ中で、しっかりと彼らなりの答を出している点が評価ポイントだと思います。
強いて言えばグルーブメタルの括りになるのでしょうが、このアルバムと似たような作品はあまりないのではないかと思います。
第2位 Beneath the Remains (1989)
4thと並んでスラッシュメタルの名盤として扱われる3rdアルバム。
息の詰まりそうなタイトなサウンドプロダクションがプレイのスリリングさを強調し、聴く者を純度100%のスラッシュメタル地獄へと誘います。
これまでは勢いは凄まじいものの若干の金太郎飴感がありましたが、今作では1曲1曲が強い個性を放っており曲の流れも完璧なので、ダレることなく聴きとおすことができます。曲数も多くなく冗長な曲もないので気持ちよくマルっと聴けちゃいますね。
特に曲単位でもアルバム単位でも、緩急をつけるのが上手くなったように感じます。
Michael Whelanによるジャケ写も本作の世界観を表現できているよいアートワークだと思います。(Obituaryの『Cause of Death』に使用されたものをMaxは望んでいたらしいですが、こちらの方が絶対良い!)
4thと迷ってこちらを2位にしましたが、ほぼ1位タイみたいなもんです。
このダークで緊張感のある作品はアメリカのバンドでは作れなかったでしょう。名盤。
第1位 Arise (1991)
文句なしの名盤である4thアルバム。
スラッシュメタルが下火になる中で発表された今作は、多少その影響を感じさせる部分はありますがそれを上手く昇華し、むしろ楽曲のクオリティの向上に活かしています。
前作ではまさにスピード勝負といった作風でしたが今作では楽曲の幅が広がり、より堂々したメジャー感が出たように思います。
オープナーの『Arise』はこれまで通りスピード勝負の疑いようのない名曲ですが、『Dead Embryonic Cells』や『Desperate Cry』では速さ一辺倒ではない旨味の多いフレーズの応酬となっています。時に浮遊感があったり、ブレイクダウンのようなヘドバン必須のフレーズがあったりと、これまでに見られなかった要素がふんだんに盛り込まれているため、スピードダウンは決してネガティブに働いておりません。
前作のサウンドプロダクションも好きですが、より奥行きを感じられるこの音も良いですね。作風にあったミキシングもGood!
ボーナストラックとして収録されているMotorheadのカバー『Orgasmatron』もこうやって聴くと緩急のない曲だな~なんて思うのですが、彼らなりに上手くアレンジしていますね。
前作もマイフェイバリットで以前は圧倒的にそちらだったのですが、年齢を重ねて改めて聴くと本作の奥行きの深さに感動したので、僅差で本作を1位としました。
3rdと4thはスラッシュメタルを語るうえでは必聴だと思うのでぜひ聴いてみてほしいです!
いかがでしたでしょうか?
兄弟仲が回復したこともうれしいですが、何かと賛否両論が起きがちな過去作のリレコをツボを押さえて高いクオリティでリリースしてくれることには感謝しかないです。
年齢的に悲しいニュースを聞くバンドも増えてきてしまいましたが、彼らには生涯現役をぜひ貫いてほしいですね!
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